こどもと通信Vol.6 ”豆まきに思うこと”
豆まきに思うこと
節分から3週間、雪が降り、花が咲き、お味噌を仕込み、年長クラスのお泊まり保育も終わり……前を見て生きるこどもたちにとって、鬼のことはもう昔の話。ですが、少し昔に戻り、節分のお話をしたいと思います。
こどもと幼児園でも豆まきをしました。今年も登場した赤鬼・青鬼はとても優しい鬼なのですが、やはり見た目は怖い。ホールに現れた途端、こどもたちはフリーズからの……目に涙をためて固まる、とにかく遠くに逃げる、先生の後ろに隠れる、顔をこわばらせながらも豆を投げる等、様々な姿が見られました。
普段やんちゃでも怖いものは怖い。それでも「あっちに行け!」「鬼は外!」と必死に豆を投げつけました。例えそれがエアー豆まきでも鬼を退治したい(あっちに行って欲しい)気持ちは強く、その気迫に押され「まいった、まいった、もう帰る」と鬼は帰って行きました。
緊張から解き放たれて泣いたり、呆然としたり、喜びあったり……ホールを出る時、涙の跡もありながらの晴れ晴れとした顔は印象的でした。
最近「鬼のように有無を言わさず怖い」ものは見かけませんね。節分の取り組み方についての議論も行われます。
必要以上にこどもを怖がらせるのはよくありません。ですが、自分の力の及ばない存在・現象があると知り、空想の生き物や世界に想い馳せ、畏敬の念を育むことは大切だと思います。古来より日本人は病気や災いを『鬼』、川の氾濫や水害を『龍』などと表現して畏れてきました。伝統行事とは、大自然の恵みや恐ろしさと向き合ってきた先人の知恵と営みの歴史そのものです。手の届かない尊いものに対する畏れと感動。その存在に少しでも近づきたい、超えていきたいという強い気持ちが力になって今に至るのではないかと、人の力の可能性を感じます。
もちろん精神的なことだけではありません。鬼の絶対的な存在感に触れ、自分が弱いことを知り、どうやって対峙するか、様々な選択肢の中で何を選ぶか、怖い中でも瞬時に考えてそれぞれが動いています。たかが豆まき、されど豆まきですね。
さあ、心の中にいる悪い鬼を追い出し、恵方巻きもいただき、今年も無事に福の神様を迎え入れることができました。こどもたちと元気に楽しく過ごしていきます!……最後に「青鬼は○○先生じゃない?!」と言って、鬼の大切な『虎の毛皮で作ったパンツ』を脱がそうとした強者がいたことは内緒のお話です。